naturalStaining

草木染めは植物から抽出した天然の色素を使って布や糸を染める日本の伝統的な染色技術。 dadadaの草木染めは漢方を主成分とした天然由来の染色手法を行っています。 染色はまさに生地との、そして天候との対話。 同じ染料、同じ分量を使っていても必ず同じ色に染まるとは限りません。 温度、時間、そして分量――。この3つの要素を全ての工程において細かく管理し、最適な状態を保つことが必須の条件です。

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草木染め ― 自然が織りなす、優しさの色

生地、縫製、そして最後の工程は染色。 この最後の仕上げに選んだのは、漢方の知恵に通じる「草木染め」。 自然の草花や実を煮出して染料をつくり、その色をじっくりと生地に移していく、古くから伝わる手仕事による染色手法です。 紀南・印南の豊かな自然に抱かれた工房で生まれる、天然由来の染色。

dadadaのグレーは、マメ科の植物・ログウッドの芯材から生まれます。ログウッドによって生み出されるグレーは体を温めてくれる色。殺菌消臭効果を持った、自然が織りなすやさしさの色です。 化学染料のような排水処理は不要。染めた水は、そのまま自然に還すことができます。染料を素手で触っても問題がありません。むしろ漢方として使える素材であるため、職人の手がツルツルになるほどです。環境への負荷を極限まで抑え、肌にも地球にもやさしい。そんな色づくりを、dadadaは選びました。

草木染めは決して効率の良い染色方法ではありません。例えば化学染料のように「いつでも同じ色」が出せるわけではないのです。分量がわずか1%違うだけで、温度がわずか1度変わるだけで、まるで異なる色に仕上がってしまいます。 1日に染められるのは、わずか10着ほど。決して大規模化も機械化もできません。それでもなおdadadaが草木染にこだわるのは、ひとえに着る人の事を最優先に考えた結果なのです。

十の工程と、三つの要素

草木染めは、10の工程で行われます。 そして、それぞれの工程で重要になってくるのは温度、時間、分量という3つの要素です。

まずは4つの工程、染色の準備段階です。染めに用いる植物の選定から始まり、計量、洗い、前処理、ここまでの準備だけで約一週間を費やします。 そして染色そのものは5つの工程――調合、煮出し、染色、定着、洗い、この工程でおよそ5時間。そして最後に衣類の乾燥。 準備に1週間かかるのに、肝心の染色がたった5時間で終わることについて不思議に思われるかもしれません。 しかし、この5時間を成功させるためにこそ、長い下ごしらえと独自の染色技法があるのです。それはまるで、コーヒーを抽出するのは数分でも、豆の選定や焙煎にたくさんの時間をかけるかのようです。 煮出しの工程では、大きなずんどう鍋に湯を沸かし、ローズウッドから染料を抽出します。ふつふつと泡立ち始めた鍋の中は、一見ワインかと思うほどの深い紫色。その中に肌着を一着ずつ投入し、手作業でゆっくりとなじませる。約30分、職人の手は絶え間なく動きます。狭い工房の室温は、大鍋を炊くことで40度に達します。その熱気の中で、一着一着ていねいに染め上げていきます。時に染色作業は過酷です。

これらの各工程において、職人はどのような温度で、どのような時間、どの程度の分量を扱うのか、な判断をしていかねばなりません。このかじ取りを間違えると理想の色味を出すことはできません。 ただただ決まった量を決まった温度で処理すれば良いわけではないのです。その日その時の気温や湿度を計算に入れて作業していかなければなりません。そのため、職人は鍋の音や泡の立ち方を聴き、湯の香りや湯気の柔らかさに耳を傾けながら、その日その時の「ちょうどいい瞬間」を探り当てていくのです。

株式会社H.A.L.U

和歌山県印南町で草木染めなど自然素材を用いた天然染色を営む。自然と向き合い、自然と共に歩み、「日常に発見を!」をコンセプトに、ARTを通じて色を探求。木の国と呼ばれる印南町で30年以上天然染めの研究に没頭している。H.A.L.Uは、Heart.Art.Love.Universalの略称。 (写真:取締役 堀口貴行さん/代表取締役 堀口久美さん)

公式サイト:https://www.halu-ecocoro.jp/